最近、友達や家族から「SNSを見てると気分が落ち込む」「インスタを見すぎて疲れた」という話を聞いたことはありませんか?実は、これはとても多くの人が経験している現象なのです。
TwitterやInstagram、TikTokなどのSNSは、私たちの生活に欠かせないツールになっています。でも、使っているうちに「なんだか心が重くなる」「自分がダメな人間に思える」といった気持ちになることがあります。
この記事では、なぜSNSを使うと「病む」と感じるのか、その理由をわかりやすく解説していきます。そして、SNSとうまく付き合っていく方法も一緒に考えてみましょう。
SNSで「病む」とはどういう状態?
まず、SNSで「病む」というのは、どんな状態のことを指すのでしょうか。
SNSを使った後に感じる不調には、次のようなものがあります:
- 自分と他人を比べて落ち込む
- 「いいね」の数が気になって仕方がない
- 投稿内容に悩みすぎて疲れる
- 他人の幸せそうな投稿を見て嫉妬する
- 批判的なコメントを受けて傷つく
- SNSを見ないと不安になる
- 現実の生活がつまらなく感じる
これらの症状が続くと、日常生活にも影響が出てきます。食欲がなくなったり、眠れなくなったり、人と会うのが嫌になったりすることもあります。
SNSで病む理由①:他人との比較で自信を失う
「キラキラした投稿」の罠
SNSを見ていると、みんなが楽しそうで、充実した生活を送っているように見えませんか?美味しそうな料理、素敵な旅行の写真、仲の良い友達との写真…。でも、実はこれが最初の「罠」なのです。
SNSは「ハイライト」の世界です。人は普通、自分の良い面だけを投稿します。朝起きられなかった日、仕事で失敗した日、友達と喧嘩した日のことは投稿しません。つまり、私たちは他人の「良い部分だけ」を見て、自分の「全体」と比べてしまっているのです。
これは、まるで映画の予告編だけを見て、その映画全体を判断するようなものです。予告編はもちろん面白いシーンだけを集めていますが、実際の映画には退屈な部分もあるでしょう。SNSも同じです。
比較の心理学
人間は生まれつき、他人と自分を比べる生き物です。これは昔から生き残るために必要だった能力でした。でも、SNSの時代になって、この比較の範囲がとても広くなってしまいました。
昔は近所の人や同じ学校の人としか比べることができませんでした。でも今は、世界中の人と比べることができます。有名人や成功者、自分とは全く違う環境にいる人とも比べてしまうのです。
これは、とても不公平な比較です。バスケットボールを始めたばかりの人が、プロ選手と自分を比べているようなものです。当然、落ち込んでしまいますよね。
「上方比較」と「下方比較」
心理学では、自分より上だと思う人と比べることを「上方比較」、下だと思う人と比べることを「下方比較」と呼びます。
SNSでは「上方比較」が起こりやすくなっています。なぜなら、人は良い面だけを投稿するからです。結果として、自分より恵まれている人ばかりが目に入り、自分がとても惨めに感じてしまうのです。
SNSで病む理由②:「いいね」中毒になる
承認欲求とは何か
人間は誰でも「認められたい」「褒められたい」という気持ちを持っています。これを「承認欲求」と言います。SNSの「いいね」やコメントは、この承認欲求を満たしてくれる手軽な方法です。
投稿に「いいね」がつくと、脳は快楽物質を分泌します。これは、美味しいものを食べたときや、好きな人と一緒にいるときと同じ反応です。つまり、「いいね」は脳にとって「ご褒美」なのです。
「いいね」依存の仕組み
でも、この「ご褒美」にはもっと欲しくなるという特徴があります。最初は10個の「いいね」で満足していても、だんだん20個、30個ないと満足できなくなります。これは、お酒やタバコの依存と似ています。
また、「いいね」の数は予測できません。ある投稿はたくさん「いいね」がついても、次の投稿は少ないかもしれません。この予測不可能性が、さらに依存を強くします。まるでパチンコやギャンブルのようなものです。
「いいね」がもらえないときの心理
「いいね」がもらえないと、「私の投稿はつまらないのかな」「誰も私に興味がないのかな」と考えてしまいます。そして、もっと「いいね」がもらえる投稿をしようと必死になります。
でも、「いいね」の数は、あなたの価値とは全く関係ありません。タイミングや運、SNSのアルゴリズムなど、たくさんの要因で決まります。「いいね」が少なくても、あなたの価値は変わらないのです。
SNSで病む理由③:情報過多で脳が疲れる
現代の情報量の爆発
私たちは今、人類史上最も多くの情報に囲まれています。スマホを開けば、友達の近況、ニュース、広告、動画など、無数の情報が流れてきます。
実は、現代人が1日に受け取る情報量は、江戸時代の人が1年間で受け取る情報量と同じだと言われています。これだけの情報を処理するのは、脳にとって大きな負担なのです。
注意の分散と集中力の低下
SNSを使っていると、常に新しい情報が入ってきます。これによって、私たちの注意は細かく分散されます。一つのことに集中することが難しくなってしまうのです。
また、SNSは「無限スクロール」という仕組みを使っています。下に scrollするといくらでも新しい投稿が出てきます。これは、やめ時がわからなくなる仕組みです。気がつくと何時間もSNSを見てしまい、脳はとても疲れています。
FOMO(Fear of Missing Out)症候群
SNSを使っていると、「みんなが楽しいことをしているのに、自分だけ取り残されている」という不安を感じることがあります。これを「FOMO症候群」と呼びます。
この不安感から、常にSNSをチェックしていないと落ち着かなくなります。電車の中、お風呂の中、寝る前…いつでもスマホを手に取ってしまいます。この行動が習慣になると、真の集中やリラックスができなくなってしまいます。
SNSで病む理由④:現実逃避の手段になってしまう
嫌なことから目を逸らすために
仕事がうまくいかないとき、人間関係で悩んでいるとき、なんとなく現実から逃げたいとき。そんなときに、SNSを見て時間を過ごすことがあります。
SNSを見ている間は、自分の問題を忘れることができます。でも、これは一時的な解決にすぎません。根本的な問題は何も解決されていないのです。
現実との境界線が曖昧になる
SNSの世界に長時間いると、現実の生活がつまらなく感じることがあります。SNSの中では、いつも刺激的なことが起こっているからです。
でも、現実の生活は本来、地味で平凡なものです。毎日が劇的である必要はありません。むしろ、日常の小さな幸せを見つけることが大切なのです。
「映える」ことへの強迫観念
「インスタ映え」という言葉があるように、SNSに投稿するために行動することがあります。美味しい料理を食べるのも、綺麗な景色を見るのも、まず「映えるかどうか」を考えてしまいます。
これでは、体験そのものを楽しむことができません。写真を撮ることが目的になって、その瞬間を味わうことを忘れてしまうのです。
SNSで病む理由⑤:ネガティブな情報に触れすぎる
ニュースの偏り
SNSには、ショッキングなニュースや悲しい出来事がたくさん流れてきます。なぜなら、そういう情報の方が人の注意を引きやすく、「いいね」や「シェア」されやすいからです。
でも、世の中はネガティブなことばかりではありません。毎日、たくさんの良いことも起こっています。ただ、それらはニュースになりにくいだけなのです。
エコーチェンバー効果
SNSのアルゴリズムは、あなたが興味を持ちそうな情報を優先的に表示します。これによって、似たような考えや意見の情報ばかりが届くようになります。これを「エコーチェンバー効果」と呼びます。
この効果により、世の中の多様性を感じにくくなります。また、自分と違う意見に対して不寛容になることもあります。
サイバーいじめの問題
SNSでは、顔が見えないために、普段なら言わないような心ない言葉を書き込む人がいます。もし、そういうコメントを受けたら、とても傷つきます。
また、自分が直接ターゲットでなくても、他人がいじめられているのを見るだけで心が痛みます。このようなネガティブな体験が積み重なると、SNS自体が嫌になってしまいます。
SNSとうまく付き合う方法
ここまで、SNSで病む理由について説明してきました。でも、SNSを完全にやめる必要はありません。うまく使えば、とても便利で楽しいツールです。
利用時間を制限する
まず、SNSを使う時間を意識的に制限しましょう。スマホの設定で、アプリの使用時間を確認したり、制限をかけたりできます。
おすすめは、「SNSタイム」を決めることです。例えば、朝の通勤時間と夜の30分だけ、というルールを作るのです。ダラダラと見続けることを防げます。
通知をオフにする
SNSの通知は、あなたの注意を奪います。大切な連絡以外の通知は、思い切ってオフにしましょう。そうすれば、自分が見たいときだけSNSを開くことができます。
フォローする人を見直す
あなたが見る情報は、フォローしている人によって決まります。見ていて気分が悪くなるアカウント、比較して落ち込むアカウントは、フォローを外すかミュートしましょう。
代わりに、ポジティブで建設的な内容を投稿するアカウントをフォローしてください。動物の写真、綺麗な風景、励ましの言葉などがおすすめです。
完璧を求めない
あなたの投稿が完璧である必要はありません。「いいね」がたくさんつかなくても大丈夫です。SNSは、あなたらしさを表現する場所です。他人の評価を気にしすぎないようにしましょう。
リアルな繋がりを大切にする
SNSでの繋がりも大切ですが、面と向かって話す関係も忘れないでください。家族や友達と直接会って話す時間を作りましょう。リアルな関係は、SNSでは得られない深い満足感を与えてくれます。
デジタルデトックスを取り入れる
たまには、意識的にSNSから離れる時間を作りましょう。週末の午前中、平日の夜の数時間など、スマホを触らない時間を設けるのです。
最初は不安に感じるかもしれませんが、だんだん慣れてきます。その間に、読書をしたり、散歩をしたり、新しい趣味を始めたりしてみてください。
SNSの仕組みを理解する
SNSがどのような仕組みで作られているかを理解することも大切です。企業は、あなたがより長時間アプリを使うように設計しています。その仕組みを知れば、うまくコントロールできるようになります。
まとめ
SNSで「病む」のは、決してあなたが弱いからではありません。人間の心理の特性と、SNSの仕組みが組み合わさって起こる、とても自然な現象なのです。
大切なのは、その仕組みを理解して、SNSとうまく付き合っていくことです。SNSは道具です。包丁が料理を作るのにとても便利だけれど、使い方を間違えると怪我をするのと同じです。
あなたの人生の主役は、あなた自身です。SNSの中の他人ではありません。自分のペースで、自分らしい生き方をしていけば、きっと心も軽やかになるはずです。
もし、SNSの使用で深刻な悩みを抱えている場合は、一人で抱え込まずに、信頼できる人に相談したり、専門家の助けを求めたりすることも大切です。
最後に、この記事があなたのSNSとの付き合い方を見直すきっかけになれば幸いです。SNSを味方につけて、より豊かで充実した毎日を送りましょう。