今、私たちの生活の中でスマートフォンやパソコンを使って友達とつながるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は、とても身近なものになっています。
LINEやTwitter(現X)、Instagram、TikTokなど、さまざまなSNSを使っている人も多いでしょう。
SNSは離れた場所にいる友達と気軽に話せたり、自分の考えや日常を共有したりできる便利なツールです。しかし、便利さの裏側には危険も隠れています。その一つが「SNSでのいじめ」です。
この記事では、SNSでのいじめとは何か、どのような形で起こるのか、そしてそれを防ぐためにできることは何かについて、わかりやすく説明します。
SNSでのいじめとは
SNSでのいじめは「ネットいじめ」や「サイバーいじめ」とも呼ばれます。これは、SNSやインターネットを使って、誰かを傷つけたり、困らせたり、怖がらせたりする行為のことです。普通のいじめとSNSでのいじめの大きな違いは、以下の点にあります:
- いつでもどこでも起こる可能性がある:学校の中だけでなく、家に帰ってからもスマホを通じていじめが続くことがあります。
- 広がりやすい:一度投稿されたメッセージや写真は、あっという間に多くの人に見られてしまいます。
- 匿名性がある:顔を見せずに発言できるため、普段言わないようなひどい言葉を使うことがあります。
- 証拠が残りやすい:文字や画像として記録が残るため、いじめられた側の心の傷が深くなることがあります。
SNSでのいじめの具体例
SNSでのいじめは、様々な形で現れます。よくある例をいくつか紹介します:
悪口や嫌がらせのメッセージ
「あの子キモイ」「学校来ないでほしい」などの悪口や、相手を傷つける言葉をSNSに書き込むことです。直接言われるだけでなく、他の人も見ているところで言われることで、より深く傷つくことがあります。
仲間はずれ
グループチャットから特定の人だけを外したり、みんなで使っているSNSで一人だけ無視したりする行為です。「既読スルー」を続けることも、相手を傷つけるいじめになることがあります。
なりすまし
他の人のふりをしてSNSのアカウントを作り、その人の名前で恥ずかしい投稿をするなどの行為です。本人ではない誰かが「なりすまし」をして、その人の評判を落とすことを目的としています。
写真や動画の無断投稿
許可なく撮影した写真や動画をSNSにアップロードし、からかったり笑いものにしたりする行為です。一度ネット上に出た写真や動画は完全に消すことが難しく、長期間にわたって本人を苦しめることがあります。
炎上させる
ある人の発言や行動に対して大勢で批判コメントを書き込み、その人を追い詰める行為です。時には本人の個人情報まで暴かれることもあり、現実の生活にまで影響を及ぼすこともあります。
SNSでのいじめが与える影響
SNSでのいじめは、被害者に大きな影響を与えます:
心への影響
- 悲しみ、怒り、恐怖、不安などの感情
- 自己肯定感の低下
- うつ状態になる
- 最悪の場合、自殺を考えるケースも
学校生活への影響
- 学校に行きたくなくなる
- 授業に集中できなくなる
- 成績の低下
- 友人関係の悪化
体への影響
- 眠れなくなる
- 食欲がなくなる
- 頭痛や腹痛などの体調不良
SNSでのいじめは目に見えないところで行われることが多いため、周りの大人が気づきにくく、問題が深刻化することがあります。また、いじめている側も「ただのジョーク」「みんなでやっているから」と軽く考えていることがあり、自分の行動がいじめだと認識していないこともあります。
なぜSNSでいじめが起きるのか
SNSでいじめが起きる理由には、いくつかの要因があります:
相手の表情が見えない
対面での会話と違い、SNSでは相手の表情や反応が見えません。そのため、自分の言葉が相手をどれだけ傷つけているかを実感しにくく、普段なら言わないような強い言葉を使ってしまうことがあります。
匿名性がある
多くのSNSでは、本名を使わなくても利用できます。匿名だと責任を感じにくくなり、普段の自分より攻撃的になることがあります。これは「オンライン脱抑制効果」と呼ばれる心理現象です。
簡単に広がる
SNSでの発言は、シェアやリツイートなどの機能によって、あっという間に広がります。「みんながやっているから」と同調し、いじめに加わってしまう人も出てきます。
24時間続く可能性
学校でのいじめと違い、SNSでのいじめは時間や場所を選びません。夜中や休日でも続くため、被害者は休む時間がなく、精神的に追い詰められていきます。
デジタルリテラシーの不足
SNSの使い方や情報モラルについて十分に学んでいないと、自分の行動がいじめになっていることに気づかないこともあります。また、一度投稿した内容は完全には消せないという認識が欠けていることも問題です。
SNSでのいじめを防ぐために
SNSでのいじめを防ぐために、私たち一人ひとりができることはたくさんあります:
SNSを使う人として
- 考えてから投稿する:
投稿する前に「この言葉で誰かが傷つかないか」と考える習慣をつけましょう。 - 相手の立場に立つ:
自分が同じ言葉を言われたらどう感じるかを想像してみましょう。 - 個人情報を守る:
自分や他人の個人情報(住所、学校名、電話番号など)をSNSに投稿しないようにしましょう。 - 証拠を残す:
もしいじめを受けたら、スクリーンショットなどで証拠を残しておきましょう。 - ブロック機能を使う:
嫌がらせをしてくる相手はブロックし、接触を避けましょう。 - 信頼できる大人に相談する:
一人で抱え込まず、家族や先生、スクールカウンセラーなどに相談しましょう。
保護者として
- 子どものSNS利用を把握する:
どのようなSNSを使っているか、誰とつながっているかを知っておきましょう。 - 定期的に会話する:
SNSでの出来事について、日常的に子どもと話し合う機会を持ちましょう。 - ルールを決める:
使用時間や使い方についての家庭のルールを作りましょう。 - 相談しやすい雰囲気を作る:
「何かあったら話してね」と伝え、相談しやすい関係を築きましょう。 - デジタルリテラシーを教える:
SNSの特性や危険性について子どもに教えましょう。
学校として
- 情報モラル教育の実施:
SNSの正しい使い方や情報モラルについての授業を行いましょう。 - 早期発見・早期対応:
いじめのサインを見逃さず、早めに対応しましょう。 - 保護者との連携:
家庭と学校が協力して見守る体制を作りましょう。 - 専門家との連携:
必要に応じて、カウンセラーや警察などの専門家と連携しましょう。
いじめを見つけたら
SNSでいじめを見つけたとき、あなたができることもあります:
- 同調しない:
「いいね」やコメントで同調せず、いじめに加担しないようにしましょう。 - 声をかける:
いじめられている人に「大丈夫?」と声をかけ、味方がいることを伝えましょう。 - 大人に知らせる:
深刻なケースでは、学校の先生や保護者など、信頼できる大人に知らせましょう。 - 通報する:
多くのSNSには不適切な投稿を通報する機能があります。活用しましょう。
SNSいじめを受けたときの6つの具体的な対処法
すぐに証拠を保存する
スクリーンショットや投稿のURLなど「いじめの証拠」を残しておきましょう。あとで相談するときに役立つ大切な材料になります。
- メッセージ画面のスクリーンショット
- 投稿のURLコピー
- 時間や相手の名前のメモ
これだけでも心が少し「整理された感じ」になりやすいです。
ブロック・ミュートで距離を取る
相手やいじめの投稿を見続けると、心の傷は深まります。迷わずブロック・ミュート機能を使いましょう。「ブロックは負けじゃないの?」と思う人もいますが、心を守ることは「自分を大事にする勇気ある行動」です。ブロック・ミュートは攻撃ではありません。防御手段です。
信頼できる人に相談する
1人で抱え込まず信頼できる人に相談することも大切です。「話す」ことで気持ちが軽くなり、「自分は1人じゃない」と実感できます。証拠があれば一緒に見せて相談するとスムーズです。
- 家族
- 友人
- 学校の先生
- 職場の上司
- 心理カウンセラーなど
SNS運営会社に通報する
SNSごとに「嫌がらせやいじめ投稿を通報できる機能」があります。運営側に通報することで投稿削除やアカウント凍結の対応が取られる場合があります。
- Instagram → 通報ボタン
- Twitter(X) → 通報機能
- LINE → 問い合わせフォーム
一時的にSNSから離れる
心がしんどいときは「SNS断ち」も選択肢のひとつ。しばらくSNSから離れて「安心できるリアルな時間」を増やしましょう。SNSから少し距離を置くことで「心の充電」ができます。
- 自然の中を散歩する
- 趣味に没頭する
- 信頼できる人と会う
法律とSNSでのいじめ
SNSでのいじめが悪質な場合、法律違反になることもあります。特に悪質なケースでは、学校や警察に相談することも大切です。「ネットだから匿名だから大丈夫」ということはなく、投稿者を特定して責任を問うことは技術的に可能です。
- 名誉毀損:
嘘の情報を流して人の名誉を傷つける行為 - 侮辱罪:
人を侮辱する行為 - 脅迫罪:
人を脅す行為 - プライバシー侵害:
人の私生活に関する情報を無断で公開する行為 - 著作権侵害:
許可なく写真や動画を投稿する行為
SNSとの上手な付き合い方
SNSは使い方次第で、私たちの生活を豊かにするツールになります。上手に付き合うためのポイントをいくつか紹介します:
- 目的を明確にする:
SNSを何のために使うのか考えましょう。 - 使用時間を決める:
長時間の使用は避け、現実の生活とのバランスを取りましょう。 - 実名や顔写真の使用に注意する:
個人情報の公開は最小限にしましょう。 - 投稿前に考える:
「この投稿は5年後の自分が見ても恥ずかしくないか」と考えてみましょう。 - 定期的に見直す:
友達リストやフォロワーを定期的に見直し、不要なつながりは整理しましょう。 - ポジティブな使い方を心がける:
批判や悪口よりも、応援や感謝の言葉を多く使いましょう。
まとめ
SNSは私たちの生活に欠かせないツールになっていますが、使い方を間違えるといじめの道具にもなってしまいます。SNSでのいじめは、対面でのいじめと同じように、相手を深く傷つけ、時には取り返しのつかない結果を招くこともあります。
一人ひとりがSNSの特性を理解し、相手を思いやる気持ちを持って利用することが大切です。また、いじめに気づいたら見て見ぬふりをせず、できることをしましょう。そして、もし自分がいじめられたら、一人で抱え込まず、必ず誰かに相談してください。
SNSは人と人をつなぐ素晴らしいツールです。思いやりと責任を持って使えば、私たちの生活はもっと豊かになるでしょう。
相談窓口
SNSでのいじめなど、インターネット上のトラブルについて相談できる窓口があります。一人で悩まず、相談してください。あなたの味方になってくれる人は必ずいます。
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(無料)
- チャイルドライン:0120-99-7777(無料、18歳まで)
- ヤングテレホン:各都道府県の警察が設置
- いじめ相談窓口:各学校や教育委員会が設置
- 法務省「こどもの人権110番」:0120-007-110(無料)
- インターネット人権相談:法務省ホームページから相談可能